直虎12話。我こそは城主直虎! ドラマ名がサブタイトルになる盛り上がり

2020年2月7日

井伊直虎(猫)

とどでございます。

前回の最後は直親襲撃で引き。直親生存のIFルートもあるのかな? なんて淡い期待もむなしく、彼は退場となりました。

今回は全体を通して、亀之丞が幼い頃に吹いていた笛の音が響いているのがまた物悲しくありました。桶狭間を生き延びた奥山孫一郎、幼き日の亀之丞の逃亡を助けた今村藤七郎が直親と共に逝ったのが涙を誘います。藤七郎が今わの際に直親の顔を見ていたのがとても印象的でした。

去って行った井伊の人間は彼らだけではありません。子供や孫を看取ってきた井伊直平、忠臣であった中野直由、今川の出でありながら井伊に忠義を果たした新野親矩(左馬助)も去って行きました。

もはや井伊は滅びる、誰もがそう思うような状況で、彼女が立ち上がりました。

前回の冒頭との対比

前回は瀬名が自刃させられる危機に瀕していましたが、松平から石川数正が駆け付けたことでなんとか生き延びました。しかし今回は同様に危機的状況にありながら、直親は朝比奈の兵によって討たれてしまいました。

この状況は、井伊の置かれた状況を暗示していましたね。周りからの助けを期待することはできず、自らの力でなんとか切り抜けなければならない厳しい状況にあるのです。

井伊にとって救世主とも言える直親はここで散ることとなり、井伊に立ち込める暗雲はさらに色濃さを増していきました。

致命的な傷を負いながらも、力を振り絞って立ち上がり、井伊谷を見つめる直親。時代に翻弄された彼は最期に何を思っていたのでしょうか。

藤七郎の表情が悲しい

直満の謀反の嫌疑によって命の危機に瀕した亀之丞。その彼を逃がすために尽力したのが藤七郎です。

亀之丞にとって非常に近い位置にいた彼は、その最期まで一緒にいました。亀之丞を見つめながら逝った彼の無念が窺えます。

ドラマ『直虎』は、メインの登場人物はお話の都合に振り回されて今ひとつ性格が安定しないことがありますが、藤七郎のようなサブキャラはまっすぐに分かりやすい性格をしているので、つい感情移入してしまいます。

独白との対比

このシーンは、直親の無事を祈って行水を行うおとわの独白と対比されていました。望みが薄くとも、もはや祈ることしかできないおとわにとっては、唯一すがれる方法だったことでしょう。

最終的には幻覚が見えるまで行水を続けていました。直親に連れていかれる、というのを未然に防ぐ母・千賀。彼女が娘を守ったからこそ、その後も井伊が生き延びることができたのかもしれません。

しのは怒ってもしょうがない

触るな! と直親に触れようとしたおとわの手を払いのけるしの。「私の夫だ!」と責め立てます。しのの視点であれば、やっぱりおとわは疫病神なんですよね。

子ができないのも、直親の心におとわがいるせいだし、直親を失ったのもおとわの采配ミスだし、なんて責め立ててもしょうがない気がします。

客観的に見れば無茶を言っているようでも、やっぱり当人の感情も大事な訳で。そういう意味では、しのも周りに振り回されながら必死で生きていたことが窺えます。

「こうなったのは誰のせいでもない」と言った直平とは対極にいましたね。

小野政次は何とか虎松の命を救った

今回は完全に裏切ったような雰囲気を出していましたが、結果だけ見れば虎松の命を救った点で見事でした。

前回寿桂尼に問い詰められたことを考えれば、直親の命を救うのはかなり難しいことでしたが、その子の命を救ったのは頭をひねったな、と感心します。

直親は下手を打った、というのはまさにその通りだし、相手の正当性を確かめられなかったのは落ち度でしょう。本来なら虎松の命も危ないところでしたが、前回「まずはおどす」と言っていたのが生きました。

ただ井伊から見れば、やっぱり小野は裏切ったと思われてしまいますね。今回の政次の表情は、何かを覚悟した顔にも見えました。後半の千賀を待ち受けるシーンで涙目になっていたことを見れば、井伊への思いもあったことが窺えます。

新野の覚悟は見事

さも井伊の重臣であるかのように振る舞っていますが、この人今川の人ですからね。

千賀の兄であるので、井伊と仲がいいというのは分かりますが、出自を考えれば今川に有利になるように働いてもおかしくないです。でも井伊と今川の重要なパイプとして働いていたのは素晴らしい。

さらに言えば、井伊の未来そのものである虎松を救うために、自分が腹を切るとまで言った新野。武士としての生きざまを見事に表していました。今回は皆の覚悟が光る回でした。

虎松の命乞いの結果、鼻にものを詰められながら謀反を行った元今川家臣を討伐するように言われた新野。上々な交渉結果でした。

脚本でそうなっているとはいえ、尾上さんは後で土下座したことでしょう。

宴会のフラグ感

直平、中野、新野で席を囲む宴会はフラグ立ちまくりな感じがしました。「お前と酒を飲むのが夢だった」なんて完全に言ってはいけないセリフです。

おとわが男子であることを願う気持ちがあったのは事実、でも女子だったからこそ、逆縁にならずに済んだ、という複雑な感情が直平の中で渦巻いていたようです。ここでの逆縁とは、年長者より若い者が先に亡くなること。

彼が口にした「逆縁」とは、この物語における彼の立場を象徴する言葉でしたね。直平の子である直宗は物語開始時点で既にいませんでしたし、その子直盛は桶狭間で散りました。亀之丞の父である直満は1話で退場、その子直親は今回ヤミウチ! されました。佐名は前回ナレ切腹してしまったので、直平の血縁は南渓和尚、おとわくらいでしょうか。

出家したふたりがなんとか生き延びた状況です。親が子に先立たれるなんていうのは想像を絶する悲しみがあるかと思いますが、それのみならず、孫にまで先立たれる彼の悲しみたるや、いかほどか。

もしおとわが男であったら、井伊の家督を継いだものの、今川が手練手管でそれを蹴落とそうとしたことでしょう。だからこそ、今回のセリフがある訳です。

ちなみに今回眠そうにしていた虎松を演じていたのは、鈴木福くんの弟です。

仏「私のせいにしないで!」

「全ては仏様がお決めになったことじゃ」と言う直平。星のめぐりあわせでそうなった、とか、星辰が正しい位置に揃ったから、とかそういった超常的な存在を意識することで、生きている人間に責任を押し付けないようにしていたのです。

人間だから、誰かに責任を求めてしまうのはしょうがないことですが、それが同じ人間ではなく、神様とか仏様が決めたことなら受け入れるしかないな、という心持ちなのです。

批判は覚悟の上で井戸を訪れる政次

髪型が父親と同じになったせいか、ほんとによく似ていますね。父親の生きる道に反発して自分の生きざまを探していたけれども、結果として父親と同じ道を歩むことになった、その姿勢を表しているのかもしれません。

「直親はいなくなったのに、なぜお前は生きているんだ」と酷い暴言をおとわから浴びせられる政次。もはや自分がこのあとどうなるか、何を言われるかも覚悟のうえで、あのようにふるまっているのでしょうね。

昊天さんカワイソス

槍を折られてしまう昊天さん。この人もおとわに振り回されている印象。結構メンターとして活躍しているのですが、割りを食う位置にいます。

小野をヤミウチ! しようと勧める南渓和尚でしたが、それはおとわの心の内を知ろうとするブラフでした。昊天さんの槍が折られたのは、武力で解決してもそれは本当の解決にならない、という暗示です。

どうするべきか決めあぐねるおとわに対し、南渓和尚は亡くなった者を偲んだり、その生き方に習う、または習わないことで、その人を心の中に生かすことが出来る、と告げます。習う場合は分かりやすいですが、習わない場合にその人を生かす、というのは、その人の生き方を一度考えた上で違う道に進むこと。「こうはならない」の「こう」の部分に生きている訳です。

おとわは「亀の魂を宿し、亀となって生きる」、と若干中二病的なセリフを吐きつつも、心の整理を付けていきました。今回は、「我は災厄をもたらす竜宮小僧じゃ」なんて魔王みたいなセリフがあったりと、随所に中二感がちりばめられていました。

「おぬしの答えは決まったのじゃな」というのは、2話の「答えはひとつじゃない」というセリフに対するアンサーです。

まぁそれはそれとして、槍を折られた昊天さんカワイソス。

女子にこそあれ次郎法師

直虎4話、幼少期の最終話でテーマとなったセリフがここでもやってきました。

次郎は井伊を継ぐものの幼名。すなわち、この名を継いでいる者は井伊の家督を継ぐに値する人間であるのです。

1話で川に飛び込んだ話や、今川から帰還をもぎ取った話など、これまでのドラマ「直虎」の決算のような回でした。

満を持しての

「我が井伊直虎である」

ここは見事でした。不幸のズンドコにある井伊家にとって、一筋の希望の光が差した瞬間です。ちらりと小野政次を見たのも良かったですね。

12話にして「おんな城主直虎」とタイトル回収が来たので、序盤の大きな見せ場となりました。他のドラマで言えば最終回を迎える頃ですから、ここで大きな盛り上がりがあるのはナイスです。

こういったシーンは胸が熱くなります。

ちなみに真田丸ではタイトル回収までに44話かかっているので、去年に比べると大分早く使った印象があります。タイトルにしているワードは、やっぱり一番言いたいことであるはずなので、それはすなわち一番の盛り上がりになり得る場所でもあります。直虎は序盤でタイトルの宣言をしたので、おとわが直虎になってからが本番、ということでしょう。これからの展開が楽しみです。

まとめ

井伊家の多くの人々が去って行きながら、それでも一筋の光が差した回でした。タイトル回収はやっぱり熱い気持ちになります。序盤の山場を迎え、これから城主としての下積み期間に入ることが予想されます。井伊を取り巻く環境も大きく変化するので、その中でこの直虎がどう動くのか、楽しみです。

おまけ

サブタイトルの元ネタ集作りました。