西郷どん第45話「西郷立つ」士族狙い撃ちの政策に不満が爆発した士族たち

2020年2月10日

うわっ……私達の給料、打ち切り……?

とどでございもす。

「シサツセヨ(視察せよ)」が誤変換によって闇討ちの命令文だと捉えられてしまったことで、鹿児島の士族たちが立ち上がってしまいました。

政府が放った密偵を吊るし上げて自白を強要しているので信ぴょう性は怪しいものの、西郷さんもこれを信じたようで、政府のやり方を問いただすために東京を目指すことになりました。

史実的な意味でこの後どうなるか知っていると、今回は脂肪フラグのオンパレードに感じます。

全く飲まないでいたお酒を西郷さんが飲んだり、奄美大島から戻るときに愛加那さんが歌っていた歌をその子供の菊草さんが歌っていたり。

大久保一蔵も個人的には西郷が挙兵するのを避けたかったようですし、すれ違いが産んだ悲劇に向かっている感じがします。

前回のあらすじ

明治政府の参議を辞め、鹿児島に帰った西郷さんは農業や狩りに勤しんでまったりと暮らしていました。

しかし西郷さんを追って薩摩藩出身の官僚たちもごっそりと辞めてしまったため、明治政府は大変なことに。本来政府の仕事に就いていたはずの人々が職を失って街をぶらぶらし始めたため、治安の悪化が心配されました。

さらには各地の士族が反乱を起こします。その中には西郷さんとともに留守政府を預かっていた江藤新平の姿も。

反乱の首魁として晒し首にまでされたことで、鹿児島の士族たちも血気に逸って暴走してしまいそうに。そこで西郷さんは私学校を作って士族たちを入学させ、教育や訓練を受けさせることにしました。

が、政府にとっては武装組織がまとまっているのと同じですから、警戒感バリバリなご様子。

今回はこんな話

今回のハイライトはこちら。

  • 愛加那さんとの子供である菊草が薩摩にやってきた
  • 大久保、薩摩の私学校に密偵を潜り込ませる
  • 私学校の生徒は廃刀令にも従った
  • でも給料の支払いも止まって暴走寸前
  • 密偵を炙りだしたらなんと西郷の命を狙っていた疑いが
  • 大久保が西郷さんの命を狙った(かもしれない)ことに西郷さんショック
  • 政府に国のあり方を問いただすため、私学校の生徒とともに東京へ向かうことに
  • 脂肪フラグのオンパレード

今回も気になる所を中心に。

悲しいすれ違い

離れていると、相手の真意を見極めるのも一苦労です。

いくら若い頃からともに切磋琢磨して手を取り合ってきた西郷・大久保の仲であっても、それは大変なことです。

西南戦争のきっかけはすれ違いによるものという説があります。

今回も出てきた「ボウズヲシサツセヨ」が西郷を刺殺せよという意味に取られてしまった点がまさにそれ。

今あなたが読んでいるこのブログの文章のように漢字に変換できれば良いのですが、当時使われていたのは「トン」と「ツー」の2種の信号を組み合わせて文字を表現するモールス信号。

例えば「ボウズヲシサツセヨ」をモールス信号で表現すると「-・・ ・・ ・・- ---・- ・・ ・--- --・-・ -・-・- ・--・ ・---・ -- 」となります。

……これだけ見てもアレなのでひらがなに変換するとこんな感じ。

「-・・(ほ) ・・(゛) ・・-(う) ---・-(す) ・・(゛) ・---(を) --・-・(し) -・-・-(さ) ・--・(つ) ・---・(せ) --(よ) 」

「トン」と「ツー」の組み合わせはひらがなと記号、数字にしか対応していないので、漢字まで網羅されていないんです。小学校で習う漢字でも1006字あるため、1006パターンも信号を追加したら通信技師が涙目です。

実はパソコンやスマホなどのコンピュータで表示する文字も「0」と「1」の組み合わせで表現されているので、モールス信号に通じる点があります。

例えば「A」をASCIIコードで表すとビット列は「01000001」に。「トンツートントントントントンツー」みたいな感じ。一緒ですね。

コンピュータで使用しているフォントは、このビット列を元にどの字なのかを判断して文字を表示しています。

明治政府が気合いを入れて漢字の対応表を作っていたら今回のすれ違いは防げたかもしれませんね。

大久保は自分で西郷を説得しに行こうとした

西郷隆盛が鹿児島の士族を率いて東京に向かっている、なんて報せを受けた大久保一蔵は、この悲しいすれ違いが誤解であることを伝えるため、自ら鹿児島に向かおうとしました。

ただ鹿児島側からしたら大久保は鹿児島を捨てて東京に行き、政府を肥す為の悪政を行う暴君ぐらいのイメージですから、迂闊に向かえば切り捨て御免されてしまいます。

それは覚悟の上で「なんとしてでも吉之助さぁを止める!」と駆け出した姿は昔の大久保一蔵のままでした。

内務卿として新しい日本を作るために私情を捨てていた大久保が、自分の感情で動こうとした瞬間でもあります。

よかった、やっぱり一蔵どんは一蔵どんでした(熱い手のひら返し)

公的には、西郷は東京に向かってくる武装勢力の首魁ですから、国民の安全を守るためにも討伐しないといけません。でも私人としての一蔵どんはそんなことしたくないもんね。

内務卿として動いているときに冷徹に振舞っているのは、岩倉使節団でドイツを訪れたときに会ったオットー・フォン・ビスマルクをリスペクトしてのことです。

彼も目的を達成するために非情に徹したとかなんとか。

彼の考えに感銘を受けた一蔵どんは、ビスマルクを真似していたのでした。

成長した菊草が登場

菊次郎の妹である菊草も鹿児島にやってきたようです。喋る言葉が違う所にやってきたからか、なんだか緊張している様子。

今回はこの菊草と愛加那さんがめっちゃ重なりました。

というのも、最後の西郷さんが旅立つシーンで歌っていた歌は、奄美大島で旅人を送り出す歌なんですよね。あれ、21話で奄美大島から薩摩に帰る西郷さんを送り出すときに愛加那さんをはじめ奄美大島の人々が歌っていたものです。

あの時って菊草はまだ愛加那さんのお腹にいたので、愛加那さんと一緒に送り出していた感じですね。その時と同じ状況が出てくるあたりがロマンシングです。

西郷さんも歌を思い出して気持ちよく送り出されて行きました。

このやっせんぼが!!

今回一番嬉しかったのが西郷さんが私学校の士族たちに「このやっせんぼが!」と一喝したこと。

廃刀令で武士の命である刀を腰に差すことを禁じられ、今まで支払われていた禄(ろく: 給料)もなくなって、我慢の限界に達した私学校の士族たち。士族を狙い撃ちにしたこの政策は、当然ながら士族からの反発があります。

明治政府は四民平等として、士農工商を平等な身分であると規定しました。江戸時代までは士族が偉そうにできていたのに、四民平等のせいで相対的に地位が下がってしまいました。

地位は下がるわ、武士の魂である刀を差すことを禁じられるわ、給料だって支払われないわで、手に職をつけていない武士たちは踏んだり蹴ったりです。

うまく商人などに転身できればいいのですが、そこはやはり特権階級だったプライドが邪魔しているのかもしれません。誇りを大事にするあまり、現在の生活がままならないことで不満がたまり、政府に対して反乱を起こす為のエネルギーになっていったみたい。

こんな状況で暴発しそうになっている私学校の生徒たちを一喝した西郷さんの姿が、斉彬様と重なりました。

国父様のモノマネ

癒し枠と化しつつある国父様と海江田。

今回は海江田が国父様のモノマネをするネタをブッ込んできました。

その内容は、東京に向けて旅立つ西郷さんを激励するもの。

「見送りになど行かん。わしに目通りたければちゃんと帰ってこい」とツンデレ全開です。現代風に訳せば「み……見送りになんて行かないんだから! アンタがどうしても私に会いたいなら、ちゃんと帰ってきなさいよね///」みたいな感じでしょうか。

初期の国父様からすると、こんな風に激励してくれるなんて考えられません。

国父様がまさしく父親のような大きな男に。

熊吉の散切り頭

明治6年に西郷さんが下野して、今回は明治9年から明治10年にかけてのお話。

3年経過したからか、熊吉も散切り頭になってましたね。

吉之助が小さい頃から面倒を見ているので、もう60くらいにはなっているのでしょうか。

結構な年を召していそうですが、今回の西郷さんの東京行きについて行くようです。つんちゃんとごじゃちゃんの2頭の犬を連れての参戦です。

犬は道中の食料調達で狩りをするときに狩猟のパートナーとして手伝ってもらう感じですかね。オトモアイルー的な。

当時の西郷さんは犬を連れて狩りによく出ていたみたいですし、犬自体もめっちゃ好きだったようですし。

鹿児島に残る寅太郎たちからすると、つんちゃん達もついて行くのは寂しいかもしれません。「お腹が減ったら帰ってくるんだよ」なんて可愛いこと言ってましたし。

菊次郎とともに

今回は西郷さんは菊次郎と一緒にいるシーンが多く感じました。

風呂にも一緒に入っていたり、私学校でも結構近い位置にいるようでしたし、親子で過ごせる貴重な時間な感じです。

菊次郎のモノローグでも「この頃までは父も幸せに暮らしていたのだと思います」なんてあったし、もう完全に脂肪フラグ。

その菊次郎は、西郷隆盛と一緒に東京に向かうこととなりました。留学を決めた時のように自分の意思で道を選んだようです。

糸さぁからしたら愛加那さんから預かった大切な子供なんだから、みすみす死地に送り出すことなどできません。糸さぁの気持ちもよく分かるなぁ……。

そしてわたしも消えよう 永遠に!!

ドラマの中で西郷さんが立ち上がった理由としては、大久保一蔵が西郷の暗殺を企んだことが原因となっています。

明治新政府が樹立され、明治維新の功労者を叙勲するときにも大久保が「侍の世を一刻も早く終わらせなければならない」なんて言っていた事を考えると、士族達を狙い撃ちにした弱体化政策を次々と行う明治政府は、完全に士族を切り捨てる気でいます。

各地で反乱を起こしたり、治安を乱したりする士族の存在は明治政府にとって悩みのタネでした。

もうちょい妄想を加えて考えてみると、西郷さんがこの意図を汲み取って、江戸時代の生き方に囚われて新しい時代の方を向くことが出来ない士族達を一箇所に集め、自分が悪者になることで一蔵の手助けをしようとした可能性もあります。

鹿児島では私学校という形で士族達を集めて町の治安を落ち着かせましたが、そのほかの地域では士族達が結集して明治政府に反旗を翻しています。

戊辰戦争で国が大きく疲弊していた状態からなんとか持ち直したのに、士族達がまた立て続けに内乱を起こしては外国の付け入る隙を生んでしまいます。

もう国内で争っている場合ではない、でも争いを起こしている士族達がいる。さらには私学校の生徒達が政府の武器庫を襲ってしまい、取り返しのつかない事態にまで発展してしまった。

もう許されないのならば、いっそ国内の不穏分子を自分の名の下に集め、明治政府に一掃させることで、大久保が強い国を作る手助けをするのが最後の仕事だ……!

わたしは西郷隆盛

すべての士族 すべての内乱

すべての不満を消し

そして わたしも消えよう

永遠に!!

なんて考えて立ち上がったところまで妄想しました。来週の予告では「生きたいものは投降してでも生きろ、死にたいものはここで散れ」みたいな感じに言ってましたし、新しい時代に迎合できず旧時代のまま命を散らせたい士族達に対して最期の花道を作ったのでしょう。

まとめ

今回は終わりに向けて動いていく回でした。

西郷さんが自分の意思で事を起こしたというよりは、周りがどんどん騒ぎを大きくして引き返せなくなった感じ。西郷の名前が大きくなりすぎたのかも。

次回の予告でもう西南戦争が始まっちゃってるので、もうクライマックスですね。