西郷どん第46話「西南戦争」大久保のため士族と一緒に消えようとした説

2020年2月10日

ご主人も、達者でな

とどでございもす。

意気揚々と東京を目指した西郷さんと私学校の生徒たちでしたが、「明治政府に物申す」のつもりでぞろぞろ歩いていただけなのに賊軍認定されてしまいました。

熊本では夜襲を受け、衝突が回避できない状況に。ここから西南戦争が勃発。激化する戦闘に一人、また一人と仲間が倒れていきます。

若い世代を残して西郷さんたちは故郷鹿児島へ。

……最終回手前で西郷さんの弟の小兵衛がやられたのはショックでした。

菊次郎は京都市長として登場した時に足を気にしていましたが、こん戦闘で足を失ったのね。

士族たちの「士族として命を散らす」というプライドは、今の価値観だったら受け入れにくい感覚かもしれませんが、江戸時代を生き抜いてきた彼らにとっては自分を曲げない刀のような生き方なのかもしれません。

あと今年の大河でも恒例の「年末に新事実が発覚シリーズ」がありました。愛加那さんの本名、正しくはアリカナさんだったんですって。戸籍から発覚したので信頼度高め。

前回のあらすじ

愛加那さんとの子供である菊草が薩摩にやってきました。菊次郎にとっては妹がやってきたので賑やかに。愛加那さんにとっては寂しい事ですね。

西郷さんは街でぷらぷらして治安を乱す武士たちを私学校に入れ、勉強を教えたり武術を教えたりと、職業訓練校のような様相を呈していました。

これを見た東京の大久保利通は、「西郷が人を集めて何かやっている……」と警戒モード。スパイを忍び込ませました。

しかしこのスパイが見つかって私学校の生徒にフルボッコにされた事で、政府との対立が浮き彫りに。

さらに私学校の生徒は政府の弾薬庫を襲撃して大砲や銃などもかっぱらってきてしまいました。どうやら政府が士族の力を削ぐ政策をバンバン打ち出した事で、不満が爆発してしまったようです。

廃刀令や四民平等は士族にとっては相対的に地位の下がる政策。日本に暮らす人であれば農民であれ士族であれ、誰かが泥をかぶるやり方を良しとしない西郷さんがついに立ち上がってしまいました。

いきなり戦いを挑むつもりはなくとも、武装した私学校生を引き連れて東京に向かえば武装蜂起と思われてもやむなし。

今回はこんな話

今回のハイライトはこちら。

  • 東京に向けて旅立った西郷さん一向、しかし熊本で政府側から奇襲
  • 大久保、西郷討伐の詔を依頼
  • 政府軍と西郷軍が衝突、田原坂では元薩摩の仲間同士で戦う悲しい戦闘も
  • 西郷さんの弟の小兵衛、菊次郎を逃がすために命を落とす
  • 維新の功労者である木戸孝允がこの世を去る
  • 政府に捕らえられた大山さぁが大久保を問いただすも「俺が政府だ」と一蹴される
  • 西郷さん、逃げ込んだ先の村が戦場になることを恐れ、軍を解散
  • 糸さぁと最期の会話

今回も気になる所を中心に。

おいが政府だ

鹿児島の私学校に資金を横流しした疑いで、県令の大山さぁが捕まってしまいました。

政府に捕まった大山さぁの所にやってきた大久保一蔵は、「政府の見解を聞いているんじゃない、お前に何があったのかを聞いているんだ」と大山さぁに聞かれて「おいが政府だ」と答えました。

個人の考えが政府の考えと同一化しているのは、なんと恐ろしいことでしょうか。

一蔵どんが参考にしているのはドイツ帝国のビスマルクの考えで、小国に分かれていた国が外国と対等に渡り合うためには、国力を強化するのが最前、という考え方。

四民平等によって農民も兵士に変えることができるようになったので、これまで戦闘を担って来た士族を殊更優遇する必要もなくなりました。なので廃刀令やら、給金の停止やらの政策をバンバン打っていたんですね。

特に士族を養うのには多くのお金がかかりますから、そのお金で工場や鉄道を整備して殖産興業を推し進めたかったんです。インフラ整備が進んで経済が発展すれば、より多くの富を生み出せるようになり、国力を強化することができます。

内務卿として絶大な権力を手に入れた大久保は、この考えのもと全力で士族を排除し始めます。

自分も士族出身でありながら、士族に対して強硬な姿勢を見せているのには郷中の仲間も「何かあったんじゃ……」と心配するものの、この一蔵どんはなかなか胸中を明かさないんですよね。

士族のために立ち上がった西郷さんに対しても、一度取り乱しはしたものの最終的に賊軍として討伐するよう明治天皇に上奏しちゃいましたし。

去っていく一蔵どんにかけた大山さぁの「先に有馬と地獄で待っているぞ!」のセリフが印象的でした。

さらば木戸孝允

岩倉使節団として海外留学をした後、体調を崩していた木戸孝允は、西南戦争の途中で病により息を引き取りました。

今際の際に放った「西郷くん、いい加減にしないか」の言葉はあまりにも有名。

薩長同盟があったからこそ倒幕をなし得ただけに、戦友が先に逝ってしまったことに、当事者でもないのに寂しさを感じました。

西郷、大久保、木戸の3人は明治維新を成し遂げた功労者として維新の三傑と呼ばれています。

もう来週が最終回だから西郷も大久保も後を追うんだろうなぁとは思いますが、この3人が近いうちに続けていなくなるのは運命めいたものを感じます。

国父様の意地

明治政府の役人が「西郷の降伏勧告に協力してくれ」と依頼してきたのに対し、国父様は毅然と突っぱねました。

「西郷をシサツというのは、視察でしょうか、刺殺でしょうか」と真意を問うても答えられなかった役人を見て、答えを察したところがまたいい感じです。

「道理の通らないとこはせん」と堂々と告げるのも強さを感じます。西郷さん個人に肩入れしてるとか、自分のおかげで出世した大久保が東京で偉そうにしているとか、それよりも道理を大事にしている辺りかっこいいです。

いや、前回旅立つ西郷に対してツンデレめいたメッセージを送ったことを考えると、西郷の方に親しみを感じていたかもしれません。

登場した頃は「これじゃ久光様じゃなくてひさみちゅ様だよ!」なんてネタ扱いされていましたが、正直ここまでかっこよくなるとは思いませんでした。

まぁ史実だと有能な人だし、やっと評価が追いついた感があります。聖人扱いされる西郷さんと対比的に、人間らしさを感じられてとても好きな登場人物です。

熊本城下での闇討ち

西郷さんが熊本に差し掛かったところで、政府の手のものが闇討ちして来ました。西郷さんたちは挙兵したつもりがなくとも、薩摩の私学校で武術の稽古をしていた人たちを何千人も引き連れて東京に向かったとなれば、そりゃ政府側は警戒しますよね。

政府側から攻撃を受けたので、もはや「士族の窮状を訴える」という大義は失われ、西郷軍は討伐対象になってしまいました。

もう本当に引くに引けない状況です。

もしこの時点で「もはや窮状を訴える大義は失われた。おはんら、薩摩に帰っど!」なんて西郷さんが言っていたらどうなったでしょうかね。みんな大人しく「はい、西郷先生帰りもんそ!」と帰る……訳ないか。

逆に「西郷先生は耄碌された! おいたちだけでもやっど!」と盛り上がりそうですし、止まるためには「戦って負けた」という結果が必要だったのかも。大久保は「日本で最後の戦にする」と言っていたし、西郷さんもこの意図を汲み取って「一蔵どん、そういうことか」なんて言っていたのだとしたら、すれ違いどころかがっつり提携してますね。

来週の予告で「おいの命で、新しい日本が生まれる」と言ってたこともあり、命と引き換えに国を平和にするメガンテ的な行動だったのかも。不平士族には最後の花道を用意し、それを抑えた明治政府には求心力が戻る。ある意味ではWin-Winな関係です。

カタカナだとファンタジーなタバル坂

激戦区だった田原坂は政府軍、西郷軍の両軍にとって重要なポイントでした。熊本城を拠点とする政府軍にとって、田原坂と吉次峠は物資運搬の要。物資のみならず援軍を送るのにも通らなきゃいけないルートなので、西郷軍としてはここで待ち構えて撃破したいところです。

先に砦を築いて待ち構えていた西郷軍は政府軍に向かって一斉射撃。農民から軍に入ったら戦闘民族の薩摩士族に襲われました、とか悪夢めいた悲劇です。

菊次郎は震えに震えていましたが、初陣で逃げ出さないだけでもすごいと思います。幼い頃から薩摩の郷中教育を受けていたのではなく、奄美大島からの転入生ですもんね。生粋の戦闘民族である薩摩士族と比べたら酷です。

最初は一進一退の攻防を繰り返していた両軍でしたが、雨が降る中、銃を捨てて日本刀で斬りかかってきた薩摩士族に官軍はひるみます。

そこで政府軍は日本刀での戦いに長けた警視抜刀隊を投入。警視抜刀隊の中心メンバーは薩摩出身者であり、奇しくも同士討ちのような形になってしまいました。今回名前が出てきた有馬伝七の時も薩摩で同士討ちがあったのが思い出されます。

命からがら逃げ延びた西郷軍でしたが、撤退途中に菊次郎が足を打たれて負傷、菊次郎を逃がすために西郷さんの弟である小兵衛が立ちはだかり、命を落としました。

小兵衛の変わり果てた姿を見た西郷さんの顔がなんとも言えないですね。戦いであるから仕方ないとは言え、だからと言って平気でいられるわけがありません。静かに泣いているのが物悲しいです。

バイバイつんちゃん

西郷さんは東京に向かうつもりで犬のつんちゃんとごじゃを連れてきましたが、度重なる戦闘から守りきれないと感じたからか、それとも自分が命を捨てる覚悟を決めたからか、彼女たちを逃しました。

縄を外した後、逃げて行くときにちらっと振り返るのがいい感じでした。

去年の大河は猫推しだったので、今年は戌年だし犬をどんどん出してくるのかな? と思っていましたが、なんだかんだ数話しか出てきませんでした。ちょっと残念。

ただ西郷さんの場合一箇所に止まってることが少ないからしょうがないですね。

解散!!

戦いを続けていた西郷軍でしたが、どんどん仲間が倒れていきます。政府の名の下に補給ができる政府軍と違って、西郷軍は人数も補給も限られているので厳しい状況でした。

逃げ込んだ村では差し入れをもらったものの、このまま村に留まっていたら戦場になってしまうため、西郷さんはある決断をしました。

それは、ここで西郷軍を解散すること。

生きたい者は投降してでも生きろ、死にたい者は死にやんせ。一緒に戦ってきた仲間にそう語りかけます。

生き方を変えられる者であれば新しい時代の生き方をして行くことができるでしょうし、旧時代の生き方しかできない者なら、侍として戦場に散るのも誉とすることができます。

西郷さんは菊次郎たち若者に「生きろ、これは命令だ」と離脱を宣告。若者たちは、頭では多分それがいいと思っていても、気持ちの上ではなかなか切り替えられないような表情をしていました。

特に菊次郎役の今井悠貴さんの演技がよかったです。あれだけの表情を出せるんだからすごいわ。

若者たちには投降を指示しましたが、西郷さん自身は最後まで戦うようです。どうやったら戦いが終わるかを考えたら、不平士族を集めて西郷さんもろとも散るところまで行かないといけないですもんね。

大久保の作る新しい国のために、不平士族とそれを束ねる自分を討伐させて、その事実を元に政府の求心力を回復し、大久保のもと国が一丸となって力を合わせるところまで持っていくのが西郷さんの狙い……とまで言うと妄想が過ぎますが、このドラマの西郷さんは他人のために生きているので、自分が犠牲になることで国をまとめようとしたんじゃないかと勝手に思ってます。

実際はどうだったんでしょうね。「大久保てめー刺客差し向けやがってコノヤロー」の精神で戦いを起こしたとかだとこのドラマの西郷さんとは別の性格になりそう。

あなたが西郷隆盛でなかったなら

ただの人であったなら、自分の身を犠牲にすることなんてなかったのに。

ただの人であったなら、普通の幸せな人生を送れたはずなのに。

西郷さんの元にやってきた糸さぁの悲痛な願いが胸に刺さりました。糸さぁは西郷さんと夫婦であり幼馴染ですから、西郷さんが自分の身を犠牲にしようとしていることは百も承知なんですよね。

西郷隆盛の名前が大きくなり過ぎて、もう本人の意思とは別の方向に進んでしまっていました。西郷隆盛の名前は全国の不平士族にとっては錦の御旗のように大きなシンボルですから、それが討ち取られれば不平士族たちももはや反乱を起こしたりはしないはず。

このドラマの西郷さんは自己犠牲の精神がありありと出ています。ただそれを見送らなきゃいけない家族の気持ちも分かるだけに辛いです。

この自己犠牲的な精神も旧時代の侍の在り方と考えれば、ある意味では西郷さん自身も士族としてその矜持を持ったまま消えていこうとしているのかも。

愛加那さん、本名は「アリカナ」だった説

放送の2日前、12/7に発表されたのですが、菊次郎の母である愛加那さんは正しくは「アリカナ」さんだったそうです。

歴史研究家の原田良子さんによると、西郷家の親戚から提供してもらった西郷菊次郎の戸籍に、父・西郷隆盛、母・アリカナと書かれていたそうな。

薩摩言葉だと「ありがとうございます」は「あいがとさげもす」でしたし、「り」が「い」になってしまったとかなんとか。

大河が終盤になったところで新しい事実が出てくるのは興味深いですね。

真田丸の時にも真田幸村を討ち取ったとされる人の手記が出てきたとかなんとかで盛り上がっていた記憶があります。ドラマの中ではそれっぽい人が幸村にあっさりやられていたのもシュールでした。

まとめ

今回は終末に向けて一気に走り出した回でした。政府に士族の窮状を訴えるチャンスもなくそのまま戦いに突入、仲間たちはどんどん倒れていきました。

特に警視抜刀隊との戦闘では薩摩同士で戦うこととなったのが辛いです。

次回予告では西郷さんが撃たれているわ大久保が襲撃されているわで大惨事。大久保が流していた涙の意味は来週語られるのでしょうか。 なんだかんだもう最終回で、気づけば2018年も終わりかぁ……。