新入社員を雇うコスト、いくらか知っていますか? 結構いい額なんです

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人手不足で終電帰り

とどでございます。

前の会社で働いていたとき、「もう1人増やしてくれたら大分楽になるのに……」と思いながら残業に明け暮れていたことがあります。上司にそれとなく聞いてみたら、「増やしたいのはやまやまだけど、コストがねぇ……」なんて悲しそうな顔をしていたのを覚えています。

いずれは法人化して雇用を作ろうなんて夢見ている現状自営業の私にとって、実際に社員を1人雇うとしたらどれくらいコストが掛かるのか、というのは結構身近な話題でした。という訳でモデルケースを考えて、そのコストを計算してみたいと思います。

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目次

  1. 考えるモデルケース
  2. 考えておきたいコスト
  3. 採用、教育のコスト
  4. 毎月の給与と住宅手当などの福利厚生費
  5. 社会保険料の会社負担分
  6. 業務に使用する機器のリース代など
  7. 退職金の積み立て
  8. この時点で、1人の社員にかかるお金を見てみる
  9. 間接部門の費用(人件費)
  10. 結局会社はいくら支払うのか
  11. このコストを見て、雇うと言えるかどうか
  12. まとめ

考えるモデルケース

今回考えてみるモデルケースの設定は以下の通りです。

  • 中規模なIT企業で新入社員を雇う際のコストを計算する
  • ボーナスは年2回、合計5か月分を支給
  • 手当は住宅手当(月1万円)、通勤手当(月1.5万円)。退職金は定年後に一時金として1000万円程度の想定
  • 今回入社する新入社員は直接部門への配属予定

この設定をベースに考えてみましょう。……お金の面で恵まれている会社ですね。

考えておきたいコスト

「社員には給料払ってれば大丈夫でしょ!」なんて緩い考えでいると一発でやられます。社員を雇うにあたって、考えなければならないコストは以下の通り。

  • 採用にかかる費用
  • 研修・教育にかかる費用
  • 毎月の給与
  • 住宅手当などの福利厚生費
  • 社会保険料の会社負担分
  • 業務に使用する機器のリース代など
  • 退職金の積み立て
  • 間接部門の費用(人件費)

うん、書いていて頭が痛くなりました。単純に人件費なんて言っても、会社が払うべきお金って結構あるんですよね。だからって労働者の立場からしたら、月給が低いことに満足できる訳ないんですけれど。

住民税や所得税などは社員自身が払うお金なので、今回は対象外です。

採用、教育のコスト

上で挙げたコストのうち、1,2番目のコストについてまず考えてみます。初期費用、イニシャルコストです。

採用にかかる費用は業界や会社の規模によってまちまちですが、マイナビの「2017年卒マイナビ企業新卒内定状況調査」によれば、採用者1人当たりにかかった採用費の平均は、46.1万円とのこと。(PDFのP82)

2014年の調査では採用者1人当たり約55万円となっていましたが、就活サイトのグランドオープンが14卒は12月、17卒は翌年3月のように遅くなったり、選考スタートの時期も遅くなったりしたことから、採用活動の期間そのものが短くなったために平均が下がったと言えそうです。採用活動自体の期間が短くなれば、その分広告を載せる期間が短くなりますからね。

教育のコストは、産労総合研究所の「2014年度大学・大学院卒新入社員教育の実態調査」によれば、新入社員1人当たりの教育費用の平均額は、入社前教育で40,527円、導入教育で185,722円。合計すれば約23万円程度のようです。教材を使うならその費用もありますし、講師の人件費も必要になります。

採用、教育のコストは約46万円と約23万円で、ざっくり70万円と見ておきましょう。

毎月の給与と住宅手当などの福利厚生費

社員として雇う以上、お給料を払わないといけません。ここからはランニングコストの話になります。

厚生労働省の「平成28年賃金構造基本統計調査結果(初任給)の概況:1 学歴別にみた初任給」によれば、大学卒の初任給平均は20万3400円。前年より上回っているのが嬉しいところです。大学院卒の初任給に至っては、前年度比+1.3%なんていう素敵な数字でした。もう23万円台なんですね。うらやましい(院卒の羨望のまなざし)。

ここでは計算のしやすさを取るため、基本給は初任給の平均である20万円として計算していきます。ボーナスは6月と12月に合計5か月分支給することにしましょう。そうすると、20万円 * (12カ月 + ボーナス5か月分) = 340万円支給することになります。

さらに、通勤手当だって必要です。例えば東京の立川から新宿まで通勤している場合、6ヶ月で66,700円ですから、1年で133,400円です。ここにバス代などを加えて、年間で180,000円としましょう。1ヶ月当たり1.5万円となります。

住宅手当があれば、それも会社から払うお金になります。1ヶ月当たり1万円の手当があるなら、1年で12万円です。

これらを加えて年額にすると370万円です。ボーナスを除くと、月に支払う額は22.5万円です。基本給20万円の手当2.5万円、これを計算のベースとしましょう。

社会保険料の事業者負担分

一口に社会保険料なんて言っても、働いている業種によって加入する保険が変わったりします。一般的なIT企業だとしたら、以下の保険が該当します。

  • 健康保険(けんぽなど)
  • 厚生年金
  • 労災保険
  • 雇用保険
  • 介護保険

このうち、介護保険は40歳になってから加入となるので、今回は対象外とします。

これらの保険については、労働者に支払う報酬をもとに、事業者の負担が決まっています。それぞれ見てみましょう。

健康保険(けんぽなど)

各都道府県によって金額が定められていますが、今回は東京の保険料で計算します。各都道府県の詳細については、協会けんぽのWebサイトをご覧ください。健康保険料は事業者と労働者で折半です。

けんぽの場合、標準報酬月額を決めて、そこから保険料を決定します。年3回以下のボーナスは標準報酬月額に含まれませんが、標準賞与額の方で保険料が掛かります。世知辛い。

手当も報酬の一部という扱いですから、今回のケースでは、標準報酬月額は22.5万円。これは等級18に当たるので、事業者と労働者でそれぞれ10,956円ずつ負担します。(平成28年の基準で計算)

これが毎月の健康保険料になるので年額131,472円

さらに、ボーナスにも保険料がかかります。今回のケースでは年2回の計100万円が支給されているので、100万円 * 9.96% / 2 = 49,800円ずつ事業者と労働者でそれぞれ負担します。ボーナスも合わせて年額にすると181,272円も事業者が負担しているんですね。結構重い。

なお実際の計算では、賞与額の1000円未満の端数を切り捨てて計算するのでご注意を。

厚生年金

次は厚生年金です。健康保険と計算方法が似ています。日本年金機構の「厚生年金保険料額表(平成28年10月分~)」を参照して計算します。こちらは都道府県で差はありません。

標準報酬月額は22.5万円なので、等級は15。折半額は20000.20円です。被保険者負担分の端数は、50銭以下なら端数切捨てになります。事業者負担の方は、事業所の保険料額からすべての被保険者の給与から控除した保険料額を差し引いて計算されます。

が、今回は計算を簡単にするため、被保険者負担分と同等であるとみなしましょう。すると事業者と労働者でそれぞれ20,000円ずつ負担することになります。

こちらもボーナスにかかってきます。100万円 * 18.182% / 2 = 90,910円が事業者と労働者でそれぞれ負担する額です。

年額で計算すると20,000円 * 12カ月 + 90,910円 = 330,910円です。重い。

労災保険

1人でも雇用していたら加入義務のある労働保険。そのうちの労災保険は事業者のみが負担します。労働者の立場だと、お金を払わないのでそこまで意識しないかもしれません。

業種ごとに負担割合が異なります。厚生労働省の「労働保険料の申告・納付」から確認できる、平成27年度以降の労災保険率表を確認してみます。

今回モデルケースとして考えているIT企業の場合はこの中の「97 通信業」に該当するので、1000分の1 * 2.5、つまり労働者に払う賃金総額の0.25%が事業者の払うべきお金です。

今回のケースでは「毎月の給与と住宅手当などの福利厚生費(項目リンク)」で計算した370万円が賃金総額に当たります。そうすると、370万円 * 0.25% = 9,250円。年間でこの金額だということを考えれば、健康保険や厚生年金に比べるとまだマシです。

※同じIT企業でも、ご自身の会社の事業における業態や業種によって、「94 その他の各種事業」に該当することもあるかもしれません。そうすると保険率が0.05%異なるので、事業の種類がどれに該当するのか、よくご確認ください。

雇用保険

雇用保険は事業者および労働者が負担します。負担割合が異なっており、事業者が7/1000(0.7%)、労働者が4/1000(0.4%)となっています。

こちらも厚生労働省の「労働保険料の申告・納付」から確認できます。

被保険者の場合は毎月の給与から控除されますが、事業者は労災保険と一緒に労働保険の形で納めます。

今回のケースでは、労災保険と同様に年間の賃金総額をベースに計算するので、370万円 * 0.7% = 25,900円が事業者の支払うお金です。

社会保険料を合計するといくらになるのか

上記の社会保険料を合計すれば、年間で健康保険料181,272円 + 厚生年金保険料330,910円 + 労災保険料9,250円 + 雇用保険料25,900円 = 547,332円。おおぅ……。

支払いのタイミングには目をつむるとして、分かりやすくするために月額にならせば、毎月45,611円を会社が負担することになります。

業務に使用する機器のリース代など

お仕事で使う機器だって会社で用意しないといけません。IT企業を例に挙げれば、作業用のPC、業務用の携帯電話辺りは必要になりますね。

横河レンタリースでノートPCをリースで借りるとしたら、36カ月で月2,230円。一番安かったHPのPCにしてみました。新人ですからね。

業務用携帯電話は、電話かけ放題プラン+データシェアあたりで月4,500円くらいとしましょう。会社によっては、相対契約でもうちょっと安くしているところもあるかもしれませんね。今回のケースは通常の法人契約でいきます。

業務に必要な機器をそろえるのにも、月6,730円です。

退職金の積み立て

退職金制度のある会社では、この退職金も会社で負担して積み立てることになります。民間企業の場合、退職金の支給義務はないので、退職金制度を導入するかどうかは会社の方針によるところが大きいです。

でも「義務が無いから退職金は出しません!」なんて言っていると、退職金制度が無いばかりに「早く辞めて、退職金の出る会社に転職しないと損だ」なんて思われて社員が逃げかねません。退職金は積み立てている期間でもらえる額が変わりますから、欲しい場合は早めに退職金の出る会社に入らないと損になる可能性があります。※これはあくまでも個人的な意見です。念のため。

さて、今回のケースでは退職金の積み立てを行う会社を想定しているので、その額も計算します。

東京都産業労働局の「中小企業の賃金・退職金事情(平成28年版)」によれば、退職金制度のある企業のうち、退職一時金を給付する企業が約70%だったので、退職一時金のみのモデル退職金の値を使います。

平成28年度の調査では10,164千円、つまり1016万円なので、12カ月 * 定年までの38年 = 456カ月で割ると、毎月22,289円積み立てることになります。この会社では、60歳の誕生日を迎えた次の3月31日で定年退職とします。

この時点で、1人の社員にかかるお金を見てみる

新入社員とは言え、かなりお金がかかっていることが分かりました。合計してみましょう。

新入社員を雇う経費

年間で4,595,560円、ボーナス分を含めて12で割れば各月のコストは382,963円です。ボーナスのタイミングを別で考慮すれば、毎月299,630円と、だいたい基本給の1.5倍くらいになっていますね。社員1人にかかるお金は、給料の1.5倍から2倍、という話はまさにその通りです。

間接部門の費用(人件費)

そして忘れてはいけないのが、間接部門の人件費。これは直接部門の社員が出した売り上げから賄わなければなりません。

経済産業省が出している、平成27年経済産業省企業活動基本調査報告書の統計表第1巻、〔事業組織に関する表〕の第8表によれば、情報通信業の従業員数(受入れ派遣従業者は含まない)は994,869人、そのうち本社機能部門(間接部門)は99,370人となっています。

ここから全社員に対する間接部門の人数比率を出せば、約10%となります。つまり、直接部門9人の売上で間接部門1人の人件費を捻出することになりますね。言い換えれば、間接部門の社員1人にかかる出費を直接部門9人で負担するということ。

間接部門の社員が全員新入社員なんてことはありませんから、給与の平均値を分かりやすく新入社員の1.5倍である225,000円 * 1.5 = 337,500円としましょう。基本給300,000円、手当37,500円としておくと、ボーナスの計算が楽ですね。実際には、人事部長などの役職者が含まれることで平均値がもう少し上がるかもしれません。

間接部門の社員にも社会保険料の支払いは必要ですし、業務のための機器、退職金の積み立てが必要です。新入社員のケースと同様に計算すれば、間接部門の社員1人にかかるコストは1年間で6,736,1109円、月額にすれば561,343円となります。

上記の比率を元に、これを9人で割りましょう。すると年間では748,457円、月では62,371円になりました。この金額が、売り上げから引かれることになります。

間接部門の社員の経費モデル

結局会社はいくら支払うのか

新入社員1人を雇う場合には、初期費用で約70万円が必要になります。

また、社員を1年間継続して雇用した場合では、社員本人のコスト4,595,560円 + 間接部門のコスト748,457円 = 5,344,017円が必要になります。

これらを合計すれば、採用と教育、1年間の雇用で6,044,017円が必要になります。ボーナスを含めた新入社員の年収が3,700,000円ですから、社員1人を雇うためのコストは社員本人の給与の約1.6倍となりました。

うーむ、結構な額ですね。

実際には、この新入社員が売り上げを出してくれているはずなので、一気にこのコストが降りかかる訳ではありません。でもこの人が辞めちゃったら、このコストを回収できないリスクもあるのが怖いところ。

このコストを見て、雇うと言えるかどうか

これだけのコストが掛かることを考えると、人を雇うのは結構リスクが高いことが分かります。しかも辞めちゃう危険もある訳で。

今なら、冒頭の上司の気持ちもちょっとだけ分かります。まぁあの後は残業祭りだったので、気持ちは分かっても肯定はしませんが。

コストに目を向けるあまり、「残業代の方が安い」だの、「残業代が付かない人間に作業させる」だの、ブラックな言葉が出てきては本末転倒です。

冷静に考えれば、BPさんに協力をお願いしたり、別部署の人に声を掛けたりなんて方法もありますから、人を雇うのは結構後の手段になりそうですね。

特にスタートアップ時はとにかくお金が無いと思うので、BPさんの存在は大きいです。BPさんと協力しながら仕事を進めてお金を貯め、上記の費用が賄えるだけの体力を付けたら人を雇う、これですね。

雇用の創出って簡単に言いましたが、結構ハードルが高いかもしれません。大丈夫か、じぶん。

まとめ

社員1人を雇うためのコストがいくらなのか、具体的に数字を使ったモデルで検証しました。その検証結果から、新入社員を1人雇う場合、本人に支給する給与の約1.6倍のコストが掛かることが分かりました。

福利厚生やボーナス、退職金を削ればコストは削減できるものの、果たしてその条件で会社に優秀な人が来てくれるかどうか……なんてところも、経営者視点では悩ましいところ。

雇用の創出に尽力してくれた先達に感謝しつつ、自分も次の世代に同じことを出来るよう頑張りたいと思います。

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